短歌 影

1
永遠という幻は芳しく多くの人を惑わす魔物

2
ひとはひと わたしはわたし それだけのことを解すのにきのこが生えた

3
横顔を射抜く真冬の夕焼けがずっとあなたを責め続けてる

4
もう今日は帰らないでね いつもよりたくさん米を炊いちゃったんだ

5
もしもまだ間に合うならばごめんねを伝える相手がいる いかないで

6
太陽は雲に隠れてちょうどいい 影のない人はたいてい嘘つきだから

7
舗道には二人の影が踊ってる さよならにまだ程遠い日々

8
人生は影と涙に比例して深く豊かになると辞書には

9
光あるところ必ず影がさす よかったこれでもう寂しくない

10
ただいまとおかえりなさい これだけで満たされてゆくふたりのすきま