短歌 紅茶

1
耳たぶに穿たれている穴二つ誤魔化すように石がきらめく

2
路傍には鍵が落ちてて行き先をなくしたバスを猫が手招く

3
紅茶とはお湯がなければ枯葉だと憂うあなたのため息のクセ

4
飛ばされる駅の近くに住んでます あなたはいつも特急列車

5
これ以上悲しくならないためだけに新しい絵本を買う夜

6
繋ぐ手も冷え切っていくときだから言い訳をして生きたっていい

7
焼き秋刀魚 窪んだまなこに箸を刺す あたし現在内気なアサシン

8
二人して一人ぼっちで生きている 秋だそんなの悲劇ではない

9
ビー玉のような驟雨が降る街で呼吸以外に何を望んだ

10
爪先があなたを見ると月の裏ではパーティーが始まるらしい