「これ、あなたのですか?」
最後のひとかけらを零してしまった
世界に否定された気がした
左手首の傷が疼いた
気の早い風が春の香りを纏っていた
花壇に小指が埋まっていた
見つけたことを後悔した
全部寒さの所為にして
誤魔化してしまいたかった
オリオンがまた嘘をついた
とても優しく微笑んでいた
拾った小指をポケットに入れた
すっかりひんやり冷えていた
風がびゅうびゅう吹き付けた
右頬がぶたれた様に痛かった
世界は小指を失った
最初の言葉から間違っていたんだ
道行く孤独を自称する人々に問う
「これ、あなたのですね。」
失ったのは誰だろう
冬の街で
泣けもせず立ち尽くしているのは