ミラーボール

ぽつぽつと雨の降る朝

折れかけた魔法の杖と

鈴なりになった眼球と

三匹の蛇の頭を携えて

あなたはお仕事へゆく

ささやくように悲鳴をあげる

日記をすべて燃やしています

もし無事に私が私を殺せたら

どうか捕まえてくれませんか

それからもう一つお願いです

空っぽになった鳥籠に向けて

罵詈雑言を浴びせてください

それがあなたの夢が叶う秘訣

青い鳥は逃げたのではなくて

どうも嫌気がさしたみたいだ

あなたはあなたがたに殖えて

寄り集まると正しさの臭いに

蝿も喜んで居場所を見つける

別にそれでいいと思うのです

許しすらもはや不要ですから

私には関係のないこととして

あなたがたはお仕事へゆくし

私は空気猫をあやして去るし

ナイフがどんなにギラギラしてても

目玉がどんなにギョロギョロしても

みんながみんな透明な鎖に囚われて

軒並み逆ラプラス変換されてしまう

蛇は優しかった!だから裁かれた!

地球は丸いのに

眼球は丸いのに

生命は丸いのに

私の視界だけが

あまりに歪んで

寂しいことです

ミラーボールになり損ねた地球が

光から逃げられない人々を転がす

ホラ早く見せしめにしてください

笑い物にしてしかも晒し者にして

飽きたら燃えるゴミの日に出して

引き続き転がっていていればよい

びっしりと生えそろった指を組んで

祈るだけ祈るだけ祈るだけ祈るだけ

そんな私の身勝手さを虫ピンで留め

それでもミラーボールにはなれない

あなたがたには欠失した季節のこと

冬だ

夜空に茫然と浮かぶ三日月が

子守唄を逆さに歌い出したら

それがなにもかもの合図です

今度生まれてきたときのため

この大地に旗を立てましょう

何も怖くないです

私なんてどこにも

いなかったよって

証明するだけです