針と糸とを

テントの中で一番大切なことは
規則正しく生きること
高く飛んだり笑ったり
涙を星と見間違えてはいけない

口を開けていいのは歌うときと
「わかりました」と言うときと
「ごめんなさい」と言うときと
みんな大好きと叫ぶときだけだ

優しすぎたライオンが餓死して
暇になった猛獣使いは飴と鞭で
見捨てられた女に音符を飲ませ
従順になるまで愛を注ぎ続ける

玉乗りよ
勝手に私の前頭葉に乗るな
そうして私に呼吸を許すな
私は苦しまねばならない
夢を本気で追って無様に
約束は破られ捨てられて
それを運命と呼べいいか

空中首吊りブランコさん
あなたがたの尊さはもう
教科書に載っているのよ
誰からも守られない嗚呼
「可哀想」って使うべき

火の輪もくぐれないのならば
愛の花束に用はない
その尻尾は燃すか巻くかして
家に帰ったならすぐ
分度器を捨ててしまいなさい

針と糸とを持ってこいピエロ
なにもかもを縫いつけてやる
不安など無用の長物なんだし
焦燥にも勝利にも価値はない

私の番が来たら阿呆みたいなソプラノを
ご披露いたしますゆえ耳栓のご用意をば
拍手で悲鳴をかき消すこともお忘れなく

季節外れの影法師  
いい加減手を離せ
脳天に刺さったままの青い青ーい
管管管が私を星に
仕立て上げていく

あ な た は 黒 鍵 し か 知 ら な い
の ん き な ア ッ ト ☆ マ ー ク !

このテントのモラトリアムは
私の気の済むまで終わらない
傷ついた日々を言い訳にして
ぐるぐる地球儀を廻してまだ

まだまだまだ
(まだまだまだまだまだまだまだまだま)
だまだまだま

少し黙っててくれないか
滑稽さはもう流行らない
だから無難な言葉たちで
心の薄皮をそっと剥いで
若さの遺棄場所を真剣に
探しているところなんだ