おとぎばなしに風は吹かない

命だったものの上に

累々と打ち捨てられた

流行りの正義(感)と

ヒトナミの中で

私はようやく溺れました

何が悲しいって

見上げた星空の何処にも

約束が見つからなかったのです

孤独などもはや

詠うための言い訳に

変質して久しくあり

灰かぶりは

硝子の靴で王子を撲殺したし

演説家は

それを認めぬと錯乱したしで

めでたしめでたしが

行方不明になりました

(それを望んだ人もいます)

何が空しいって

レンジでチンではぬくもりが

ふやけてぼやけてしまうこと

平等は実のところ

ひどく陋劣な独善と

思い知らされました

(断罪するならご自由に)

月の御姫様は

草食系を処刑したし

博愛家は

暗闇の中で自らの舌を裂くしで

あらゆるハッピーエンドが

安否不明になりました

そして今

夢に踏み潰された花の上に

私が立っています

誰かさんの遺言を

聞き逃したのは午後十時

(優しかっただけだよ)

(気にしないで)

(そんなことないよ)

(気にするな)

風よ凪げ

オリオンの逃げた早春の夜空には

ヒトナミに打ち捨てられた眼球ばかりが

炯々と地球を睨んでいました

私はなんだか嬉しくなって

口笛を吹いて

PASMOに二千円をチャージしました

もしどこかに

素敵な居場所があれば教えてください

終電で向かいます