短歌 言い訳

1
目的地まであと三歩届かずに三歩ごまかし過ごす生きかた

2
マジシャンの本気の恋は種明かしできないゆえにひどく不評だ

3
夜が天から階段を降りてきて夕焼け抱いたのが動機です

4
行先のわからないバスを降りられずふたりぼっちで神さまを見た

5
目のなかに宇宙があるというきみの流す涙に願いをかけた

6
右側にいなさいきみはずっとずっと私の利き手を支配しなさい

7
夕映えのカクテルを飲むその指で混ぜておくれと懇願をせよ

8
薔薇よりもすずらんよりもトリカブトよりも激しい恋を盛られた

9
助手席で泣きだすあたしの横できみ、アクセル全開で笑わないでよ

10
なんであれずっと一緒に暮らすから言い訳の新作を聞かせて