短歌 打たれる権利

1
黒い猫として生まれて疎まれてそれでも雨に打たれる権利

2
街じゅうに傘の花咲く 正しさはどこにもないと数人気づく

3
銅像の濡れそぼっても堂々ともろてを伸ばす先の暁光

4
夜が明けてまだしとしとと降ってたら私たちきっと間違ってない

5
ワイパーの忙しさに反比例する二人の午後は誰も知らない

6
新しい傘を広げたきみを見てひとついいことを思いついた

7
人々を試すみたいに降る雨にひとりで笑うきみの寂しさ

8
傷痕に滲みる一滴もやがては痛みとともに海へと還る

9
こんな日に傘を忘れるような僕をおんなじ傘に入れられますか

10
なにもかも雨のせいだよきみとぼくこれからずっととなりにいるの