木を植えたいのです
誰のものにもならない場所に
誰にも識られることもなく
もちろん誰のためでもなく
これ以上眩しくないように
これ以上騙されないために
独りでちゃんといられるように
ああそれでも
僕の認識は否が応でも
大地から与えられた
血肉の間を満たしては
どくんどくんと脈を打ち
木のように黙ることができない
ズタズタになった僕の海馬が
中指だけを認めて
ボロボロに傷を負った中指が
僕だけを貫いても
それを決して愛なんて言わないで
太陽がもうひとつあれば
過ちも蒸発してしまうのに
この情けない体まるごと
なかったことにできるのに
オーケストラがやってきて
僕を責めるためだけに
素晴らしい演奏をする
サーカス団がやってきて
僕を糾弾するためだけに
ひょうきんピエロが首を吊る
ショーレースが開催されて
僕を無視するためだけに
ときめきが量産される
皆々様!(僕以外の)
喜びを!(僕以外へ)
木を植えたらばどうか
僕を独りにしてください
僕を独りにしてください
どこに植えるかはもう決めている
他ならない【ここ】です
(空想ここまで)
誰にも識られることのない
僕の脳幹の真ん中に
ツツジの木を植えました
――御覧なさい!
星空とはこんなにも綺麗だったのです
大静脈の儚さを教科書に載せましょう
選択肢を奪われてゆくことはすなわち
幸せの近似値であると断言しましょう
/こちら、独善の花にございます
天地逆転した人間の涙のように見えるのは
それを見るあなたが寂しいからです