短歌 街

1
「飛べるはず」から「はず」だけが剥がれ落ち中央線の線路見つめる

2
他人事として過ぎてゆくカタコトン線路の温度に気づかずコトン

3
ふたりして夜に食べられそれからは街灯の蛾にさえ怯えて踊る

4
もし5月に雪が降ったらきみだけが正しかったと思い知れ、街

5
コンビニで値引きされている命をタイムセールでなんとか留める

6
借りたまま返し損ねたパックマンいまだ全クリしてない青春

7
ホームから手を振るきみの内側で手を振るひとは誰なんだろう

8
穏やかな街に咲いてるすずらんを花言葉ごときみは燃やした

9
この街にマニュアルがもしあるのなら【僕ら以外の】ひとにやさしく

10
流行歌ひとつも知らず歩いてるそれだけでもう生きづらい場所