街を歩いていると、ああ私ってほんとうに独りなんだなと思えるから好き。万が一もう一人、私が向こうの道からのたのた歩いてきてもちゃんと無視できるくらいには強くなりました。失うべき音が一つもないこの街の唯一の汚点が私。とても心地よい初夏の、少し湿気を含んだ風を鼻腔で吸い込むと、目の前で私が痙攣を起こして倒れるの、これも予定調和。星空に投げ捨てられた願いを拾ってそのへんの牛乳瓶に詰めて、多摩川に流すのも立派な使命だから、飽きっぽい私には相応しい安っぽくて美しい暇つぶし。ねずみ講を知らずに大人になれたことを最近では僥倖と呼ぶらしいね。信じていたものが足元からぐらつく快感も味わったこともないくせに、よくそんな顔で震えていられるもんだ。なーんてね。がらくたを寄せ集めて鱗粉を振りかけると私になります。レンジがあれば羽ごとチンしてくださいね。便利なのは生きることだけではないからね、生きやすさはなんでこういちいち湿っぽいのかしらね。私たちもう終わりましょうなんて私が言うんだけれど、いつ始まったっていうの。無愛想はよくないよと引きつった笑顔で列を成す私たちのどこにも責任はない。羽虫を潰して擦り込めばそれなりの模様みたいになるじゃない、もうそれでいいと認めるべきです。右目から垂れたひかりは多摩川のみなもで乱反射する恋。恋。馬鹿。いっせーの、で京王線の線路を一路目指した青春はあまりにも! 鐘を殴打するのは私しかいないじゃん、でもこの街のどこにも私だけいないじゃん、どうして悲しくなれるの、責任とれよ。そう迫ってもへらへらしているだけの私だから駆除されたんだねわかります。つらいときにつらいっていうとつらいからもうやめるね。恋の囚人を匿っていた檻の一本が私。よくしなると評判だったんだ、でも別にもう誰も信じなくていいよ、なにも始まっちゃいないんだから。