1
あなたから借りた詩集を開けずにうずくまってる金曜の午後
2
蝶々の不規則な軌道を追ううちやがてあなたにぶつかる視線
3
陽光のあたる窓辺でふたりして黙って揺れる雷を待つ
4
「深呼吸したほうがいい顔色があまりよくない」あなたのせいだ
5
にわか雨に打たれ落ちてくクロアゲハより美しいあなたの静脈
6
人びとはすでに桜を忘れたと憂うあなたの残り香をかぐ
7
爪を噛む癖が治らずそれでもいいとあなたは笑う
8
同じ場所が疼くがゆえにわたしたち傷を寄せあい存在してる
9
伸びすぎた前髪をすく仕草まで私を襲うそれであるかと
10
横顔が一番好きと言われたら横にいるしかないんじゃないの