短歌 中央線

1
操車場にはオレンジ色の孤独たち発車できるとまだ信じてる

2
終点に着いたところでこの僕に行き場がないことに変わりはない

3
各駅に止まる人生でよかった あの軒先には風鈴がある

4
蝉の声かき消してゆく列車たち 僕にだけ聞こえるSOS

5
多摩川を越えたらだめと祖母の口ぐせを信じておけばよかった

6
すれ違う瞬間きっと鉄塊は何度となく誰かを連れ去っている

7
都会にはなにがあるのと問われても孤独以外に答えなどない

8
林立のつり革だけが知っている誰もここでは救われないと

9
いち、に、さん リズムをつけてみてごらん みんなが空に溶ける日野駅

10
前のめりと前向きは違うらしかった 先頭車両に乗るんじゃなかった