短歌 包帯

1
夏が逝く ただそれだけを理由とし左手首の傷がふえてく

2
パスワード管理アプリのパスワードを忘れた 今日のお風呂はぬるい

3
もしきみが湯舟の底に沈んでも地球は回る 思い出として

4
美しいとはたぶんきみのこと/なら/優しいとはあなたのこと

5
痛み止めで治る程度の痛みならずっとそのまま誤魔化し続けろ

6
思い出は作るだけなら意味がない 思い出になるだけならなおさら

7
「後戻りできないことはありますか」取り返しのつくことがあるかよ

8
手の中にアクアリウムがあるとして熱帯魚とはなぜに寂しい

9
この頃は血を燃やしても冷やしてもいけないらしい レシピを見せて

10
包帯が外れるときが来るとして生き上手にはなれそうにない