短歌 雨

1
さなぎから孵れなかった者だけが曇天の日に笑ってもいい

2
黄信号でアクセルを踏むきみだからひとのむごさをよく知っている

3
助手席で雨の予報に気がついて横顔見るともう降っていた

4
写真館にて留められた「今」たちが手招きをして昔を語る

5
上手く生きられずにごめんなさい僕の歩く道には椅子が足りない

6
水槽の中でなら凛と生きられる肺呼吸には向いてない僕

7
メロンパンにメロンが入ってないように既成事実はよく嘘をつく

8
よく見ると数がおかしい気もするがみんなピースの集合写真

9
許されるための「ごめんなさい」なのに命令形なのはなぜなの

10
バス停で雨宿りするふりをしてきみを待ってたなんて言えない