短歌 唐揚げ

1
花ひらくそのモーションは容赦なくあたしを奪う 誰か助けて

2
優しさが崩れる瞬間(とき)に口走る「ごめんなさい」は脅迫として

3
朽ちた枝さえ必要とする虫がいる 生きるばかりのあたしよりもだ

4
「役に立つ」が礼賛されて寄る辺ないあたしの影は踏みつけられる

5
信じれば信じるほどに滑稽に映るテレビの中のほんとう

6
今日もまた無様なあたしとして終わる 予告編にも無様なあたし

7
がむしゃらに走ってきたら失くしものばかり もう進めない おやすみ

8
頭からかじりつくとはやりおるな たい焼きで知るきみの本性

9
唐揚げは奇数であった 我々の何かが試されている今夜

10
大丈夫僕も死にたい今日だからなんとなくでもとなりにいるよ