短歌 風

1
木枯らしは過日のきみの歌声を遠く遠くへ連れ去ってゆく

2
スカートをめくる北風もしかして私は恋をしたんでしょうか

3
傾いて置かれたままの写真立てのなかのきみは風を知らない

4
落ち葉舞う朝を迎えて別れだけ必然であることに気がつく

5
風を切り走る列車は新宿で風そのものになるんだろうな

6
焼き芋を分け合う人が待っている北風ももう冷たくはない

7
木枯らしに2号がもしもあるのなら春二番だってあったっていい

8
そよ風にススキがゆらら手を振って今年の秋も去るのだと知る

9
凪いだ日は風の恋しい風の日は凪の恋しいないものねだり

10
電話していいですかまだ木枯らしが心の中で荒れているから