1
まだ指で疵を数えている人に初冬の風は容赦なく吹く
2
吐く息が白くなったら人々は大事な人を想うのだろう
3
あんまんを分けあう人がいたとして基本的には一人で食べる
4
泣くこともできずに心凍らせたきみのとなりにストーブを置く
5
優しさは敢えて問わない態度だと伝えてくれるきみの沈黙
6
ひとりだけ置いていかれた紅葉は誰も恨まずただ揺れている
7
新しいリップクリーム買うたびに大人の階段のぼれずに冬
8
「太陽は寒がりである」日の入りの早まるわけを実は知らない
9
冬になるただそれだけを事由とし寂しくなっていいこととせよ
10
泣いていい叫んでもいい生きるために生きるという選択もある