1
伸びすぎた爪を切るとき残酷になりきれなくて過去が居残る
2
パーフェクト百点満点ですあとは欠けてゆくのを待つだけの刑
3
月見そば最初に黄身を潰すきみ なにが大事かわかっているの
4
光こそすべてであれと祈るひとまぶたの裏に土砂降りの雨
5
宇宙人だといわれても年賀状出しちゃったからなんかごめんね
6
このごろはあらゆるものに名がついて薬ももらう だからしんどい
7
耳かきをしているときの恍惚は乾いた大地をうるると溶かす
8
面影が似てきたことを喜べず笑顔の母に謝れもせず
9
雪になれ なれないのなら雲よ去れ 曇天の日には泣けない決まり
10
忘れ物なんだよ過去はみなちぎれなかったミサンガなんだ