短歌 癖

1
風を呼ぶさかさまつげにマスカラを塗ったとたんにほころんだ春

2
苦しいと瞬きをする癖があり診断したがる人種がいる

3
大丈夫大丈夫って口癖は大丈夫じゃないときに出てくる

4
雨上がり間違いなんてなかったとスタッカートを舗道に刻む

5
コーヒーが冷めきっている 傷は芽をこういうときにずるっと伸ばす

6
満たされたとたんに欠けてゆく月が昔から教えてくれていたこと

7
爪を噛む癖があるのかトーストを食べるとき不便そうだね

8
花束を贈ってくれるひとがいる(ただし毎日贈ってくるのだ)

9
花束を贈ってくれるひとがいる(ただしスノードロップ入りなのだ)

10
花束を贈ってくれるひとがいるどうやらそれが癖らしいのだ