心優しい獣だけが識る

柔らかな裏切りを

生唇で受け止めて

虚しくなるだけで

上等だって笑えよ

風はまた吹くだろうか

遠ざかる記憶を手繰る

獣に堕ちたあなたの眼

もう一度くださいって

失うごとに欲しがって

どこにもきっかけなど

落ちていないというと

それは嘘ですよねって

寂しそうに鳴いてみた

風はそろそろ凪ぐかな

手を叩き足を鳴らして

闇と手を繋いでみたび

許されるためだけに!

祈りのポーズをとって

苛立ちを覚えながらだ

生み出せてしまうのだ

嘆いたのは私のほうさ

(気をつけて!)

(ここは昔緑の多い公園でね、心優しい獣がいつもみんなを見守っていた。あそこに岩が突き出ていて、そこにいつも座ってこちらをね。そうそう、みんな朗らかだったよ。晴れれば散策、雨が降れば声を合わせて歌を歌った。今高速道路の通るこの街にも、陽の射す場所があったんだ)

あなたが奪った。

イメージしてごらんなさい

……できるものならば……

人間だけが独善に溺れては

ランパトカナルに縋りつき

目頭などを熱くさせている

(さようなら)

獣は己の名を知らない

名を与える者もいない

心地よい風が吹いたら

暴いてあげる遺伝子に

螺旋階段の嘘と破裂と

敵すらいない真の孤独

泣き声だか鳴き声だか

知らない知りたくない

混ざってしまう記憶が

都合良く上書きされて

幸せなつもりになれる

さようなら。