短歌 羽

1
苦しくて金木犀を手折るきみ逃れられずにそこかしこ秋

2
冷凍庫の奥に隠した金魚たち人を恨むか夏を騙るか

3
満月は欠けてゆくのみ きみはまだ白紙の手紙燃やせずにいる

4
二つめの月は青色回転灯まちの上気を牽制している

5
手折られた金木犀の鋒をあなたに刺せば豊かなる秋

6
もし羽が生えたとしてもそのとなり私のためにとっておいてね

7
冷凍庫から取り出して湯をかけて動いたそれを命と呼んだ

8
金色の多摩川渡る特急の七人がけのみんながスマホ

9
新月は満ちてゆくのみ きみはまた万能ねぎをみじん切りする

10
その背中はだれのものにもならないで羽が生えたら還っておいで