短歌 叶

1
玉ねぎの皮を剥く手が止まらない流星群の夜のキッチン

2
サイレンは他人事として鳴り響く禁じられないシーソーゲーム

3
街宣車その勢いで火星までいってらっしゃいというさよなら

4
ツユクサの青をヒールで踏み潰す(公序良俗には反してない)

5
巣に帰る烏の声のさやけさよもう迷えないところまで来た

6
伝えたらあとは溢れてゆくばかりストーブの火がとろとろ揺れる

7
心配をこころくばりと読む人よきみの願いに僕はなりたい

8
流星が断末魔だと知りながらかけた願いが叶ってしまう

9
放課後にむかし流行った方法で空を飛ぶため屋上へいく

10
秒針がはたりと止まる 人生に〈ゆめまぼろし〉とふりがなをふる