短歌 満ちてゆく月

1
月明かり左手首の傷痕に名前を付けた 消えないように

2
偏差値が偏見差別の値だと気づいた人に満ちてゆく月

3
月のない夜にランパトカナルする いのち、いのち、いのち、いのち

4
搾取する/される関係 ハウツーのどこにも載らぬ月の優しさ

5
予感する いや振り払う 予感する 規則正しい月の満ち欠け

6
ゆりかごを燃した手で抱きしめられる 頭上で刻々と月の欠ける

7
もし月がなかったならば寂しさはもっと寂しい色をしていた

8
盗まれた財布が戻る 小銭入れに月面の砂が詰まって

9
「いつもなら月が出るまで我慢して月が出たなら手にかけるのよ」

10
ランパトカナル失効したポイントカード寒い月夜に吠えるわたくし