短歌 喫茶店

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喫茶店 死にたくなると溶けかけの氷を口に含んだ二十歳

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カウンター席の隅っこで目が合ってキーボードでunmeiと打つ

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禁煙かどうか聞かれて「大丈夫です」ここでなら泣ける気がして

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待ち合わせ時間まであと20分覚悟を決めるのには足りない

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おひとりさまですか それではあちら側にてグラタンをお頼みください

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ときめきを水に溶かしたものが次バズりますから早く溶かして

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汗をかくグラスにきみのイニシャルを消すためだけになぞってみせた

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シュトーレンが凶器になるくらいぎっしり美味しいものを詰め込む

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クラシックのかかる店内「子犬のジルバ」とこぼすきみの恐ろしさ

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沈黙も味わいのうちふたりにはふたりの時間がある喫茶店