1

封筒の切手を丁寧に剥がすのは夢から覚めるのが下手だから

2

クッキーが焼きあがるまで起きないで銀世界だと気がつかないで

3

白線の外側へゆく人たちに手をふり返す冬の夕暮れ

4

イルミネーションの明滅きみがいま壊れゆくこと合図している

5

さかさから読んでもトマト悔しくて白いワンピでナポリタン食う

6

夜空からぶら下がる星つかまえて小さな部屋の一隅照らす

7

葬列で花を持つひと優しさをこの日のためにとっておいたの

8

あかねさす暮れの舗道をふたりして土鳩の真似をしながら歩く

9

マグカップに星を浮かべて飲み干した罪に問われる夢をみました

10

夢は夢のまま終われば夢である きみは寂しさをよく知ってる