短歌 傘とクッキー

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曇りのち雨の街では誰しもが誰かに差し出す傘を持っている


平等はどこにもないとわかってて半分こする指先がすき


ラングドシャをランドグシャっていうひとの気持ちがどうか潰れませんよう


灰色が好きと伝えた午後に降る雨雲が愛されてふくよか


春雨のやまないうちにクッキーを焼こうかきっと美味しくできる


ビスコッティよりも強固な決心をしたから特急列車で西へと向かう


クッキーの生地を練るとき左手が疼いてしまう 恋をしている


二度寝して三度寝をして春だから告白さえも夢のただなか


降り出したとたんに街にあふれる傘は一人用にできている

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雨上がりもうすぐクッキーが焼けるから思う存分泣いてもいいよ