短歌 葉桜

1
無ってほら蕪にとってもよく似てる草冠を編んであげるよ

2
頬撫でる春風は暗い思い出を捨て去るためだけに吹けばよい

3
あの人の好きな季節が巡り来てチューインガムを吐き出す舗道

4
金星に桜が咲くと信じてるきみと何度も勘違いする

5
くちびるを撫でた花びら後悔はしてからじゃないと味わえない

6
無になれない蕪を煮ている【我】という空間図形滅ぼしたくて

7
破裂したチューインガムの臨界点 もしかしなくてもあれが初恋

8
ハッピーターンの粉疎ましい新生活 馴染むことこそ至上命題

9
卯月もう卒業写真が懐かしい ついこのあいだ失せた輝き

10
葉桜を責める人などいないでしょう烏兎匆匆と過ぎてゆくだけ