今日の短歌 ベランダ

1
ソーダ水こぼしたとたん「運命」を口ずさむきみ指揮するわたし

2
錠剤に向ける視線の邪魔をする きみが見るべきなのは私だ

3
降り立ったホームでカーディガンを脱ぎ風に教わる夏への扉

4
もし栞になれるのならそばにいてときどきふれてもらえるのにな

5
「ただいま」をふたりの部屋に灯すため星のあかりを連れて帰った

6
紫陽花が雨を呼ぶ午後 日曜にディミヌエンドのペダルをかけて

7
きみ史上最低なひとになりたいそれでいいから忘れさせない

8
花束になれない花だけを集めるきみの帰りをベランダで待つ

9
雨音のリズムに乗って窓ぎわをブロードウェイにしてみせるきみ

10
三日月をねだる今宵の瞳には見たことのないきみが棲んでる