1
満月の下の問いかけくちびるは正答だけを避けて近づく
2
水槽を覗くふたりは寂しさが足し算できないことを知ってる
3
浴槽で金魚がひとりダンスするそう虚しさってこういう感じ
4
過去形にしたい痛みはきみのそれと同じ匂いの線香花火
5
過去形の傷と痛みに立ち止まる私は今を生きていますか
6
過去形にしたい痛みに目を閉じる人はみなその仕草で終わる
7
きみ宛の手紙の終わり方だけがわからず今日も出せないでいる
8
あたりまえとありきたりとを積み重ねそれを日々ってきみと呼びたい
9
夜の森さながらきみの目の奥に棲みつく闇と対峙しなければ
10
優しさが雲に隠れる夜だから泣いても無駄と思い知らせて