短歌 ミルクココア

1
初雪を待つ窓辺にて会いたさをミルクココアにぐるぐる溶かす

2
加湿器の勤勉なこと灰色の街に暮らして十一年目

3
吐く息の白さを比べあって今日特に用事がなくて嬉しい

4
新しい財布をセールで買ったら入れるお金が減ってしまった

5
富士山が遠くに見えるマンションできみと揺れてる冬の一日

6
あたためたミルクココアを差し出した泣かないでとは伝えられずに

7
初詣ふたりそろって引いた凶マイナス二乗プラスに転ず

8
やがて夜やかんの湯気がしゅんしゅんとふたりの影を見守っている

9
甘すぎるミルクココアは舌を焼く愛の言葉がそうあるように

10
初夢に出てこなかったきみの頬ゆびでつまんでむにーっとする