1
めでたし、のつづきをみんな生きている罪の意識にリボンをかけて
2
「生きている」わざわざ口に出すようになって久しい春一番よ
3
叫べたら壊れることもなかったと軋む吊り橋の上できみは
4
枯れていく花束見つめ幸せを過去形にするきみの黯い目
5
おそろいのタオルはためく昼下がりナイフ片手に影も揺れてる
6
新宿へ向かう列車の最後尾 は、る、と口にし小夜風を待つ
7
生卵いのち未満と決めつけて割り掻くひとの細胞分裂
8
卒業を脱出と呼ぶ友だけが輝いていた(今も変わらず)
9
静脈の別名である文脈を測る係の校正器官
10
東風を我が身に強く抱き歩き出す痛みとともに優しいほうへ