加速度を上げたレッテルが
水槽の中ではち切れるとき
金魚どもの骨々は報われる
空——まだ数えるには足りない幻滅と
明滅するスマートフォンの広告たちが
ゆらゆら行く手を阻むためだけに在り
私の残滓の根本になってしまうとして
|雁《かりがね》は季節を|違《たが》えて
気まぐれに入水する
それを見ていた金魚は
尾鰭をひらひらさせ
確かに泣いていたと
それを見ていたのは私
見ていただけの三番星
誰か名付けてください
馬鹿と同じ意味の名を
早くこの星座に与えて
祭りの金魚が掬われて
何処かの誰かが救われて
いつしか誰もが巣食われて
スマートフォンの広告ばかりが
炯々と猥雑さと笑顔とを正しい
手順で振りまいている日曜日は
金魚が腹を向けるに相応しい日
私だってそう
誤ったことのない人に
私は会ったことがない
金魚を弔うためだけに
駅前が再開発されても
記念樹に刻まれるのは
馬鹿と同じ意味の名だ
空——輝き続けるには無理がある
太陽は毎日懲りもせず沈んでゆく
誰にも気づかれないよう私はほら
指でピストルを作ってこめかみに
浮いた金魚に語りかける
静かな日曜日の昼下がり
水草はゆらら雄弁にもう
おやめなさいと忠告する
私だってそう
わかっています