1
「うん、いいよ」そこで途切れたやりとりのとなりで揺れる曼珠沙華たち
2
若かったそれよりずっと馬鹿だった落暉を何度見逃したろう
3
沈黙は愛のかたちと気がついて微笑み交わす秋の訪れ
4
「スプーンじゃないほう取って」で通じるそんなふたりをパスタも笑う
5
馬鹿にするよりされるほうを選んだふたり向き合いゼリーをつつく
6
優しさはときに寂しい十六夜の欠けゆく様が無音なように
7
神さまに宛てて手紙を書いたのにどうしてきみのもとに届くの
8
なにごともなかったように続いてる線路の傍に咲く曼珠沙華
9
ガラス戸に差しこむ夕陽つかまえて囚われているのはきみのほう
10
「温泉に行きたい」きみは真剣に愛の告白をするみたいに