短歌 箱庭

1
そのなかに神の文字あり僕たちは何を治しているのでしょうか

2
こころには絆創膏が貼れなくていつになっても血が止まらない

3
夕食後カップを持って行列になって薬を待つ午後七時

4
映画にもカフェにも買い物にも行けず何を癒しと呼ぶのでしょうか

5
過去がなおいまを蝕むエビデンスになりませんかこの苦しみは

6
手遊てすさびをしていた老婆はもしかしてタイムスリップしてきた私

7
空の青よりもしんどいフルニトラゼパムを割ったときの青色

8
病むにつれ忌避や侮蔑を浴びせられ薬という名の毒まで盛られ

9
今ならば自ら命を手放した友の気持ちが(けれどできない)

10
処方箋よりも言葉が欲しかった箱庭の隅で泣いていた日々