短歌 誘蛾灯

1
見守っているとあなたは仰るがそれは見張りとどう違うのか

2
パレットに黒と白しかないなんてその身に巡る血を思い出せ

3
素数より美しいものを知らないこの人生は上々である

4
誘蛾灯ぜんぶ折ってもいいですか許可されなくても折るんだけどね

5
群れているわけですらないあの蛾らは鱗粉に見惚れることはない

6
誘蛾灯ほらほら僕が群れている影も落とさず僕だけがほら

7
画用紙の横でカレーを食べている予定調和の悲劇は喜劇

8
光らない蛍も好きと言えますか不可視なものは嘘をつかない

9
燃え盛るほどに心は弱くなる冷たかったら愚にもつかない

10
ラジオからちゃんと聞こえたSOS=ノイズまじりの愛の告白