あの子へ

ゆるすとは
なんだか
手放すことに似ている

あれが許せない
これが納得できない
あいつを糾弾したい
あいつらを見返したい

そういうあれこれを
両腕にがっちり抱えていては
すきな色の風船が飛んできても
手をちゃんと伸ばせない
ときめく景色をに出会っても
スケッチできない
大切なひとたちに宛てて
手紙を書くことも できない

優しくあろうとして
心をへし折られた
ただそこに居るだけで
傷を嘲笑われた
なにをしても結局
無難さ/同調圧力/不誠実に
屈さないと生きていけなかった

その時だって間違いなく
一生懸命だったのだから
両腕を拘泥から引き上げる
勇気ならもうあるはずだ
偏差値/収入/輝かしいステータス
そんなものすべてただの数字だ
割るなり引くなり分解しよう
その力なら既に

ひとつひとつ
ゆっくりと手放してみよう
怖いかもしれない
悔しいかもしれない
なぜこちらが
強く優しくならねばならないのかと

でもそれは
できるひとにしかできない
とても大切なことだからだ

ひとつ ゆるして
ひとつ 手放して
ひとつ 自由になった指先が
ふとそよ風にふれる
その心地よさは
次のゆるしを気づかせる

風に遊ぶ手のひらを
やがて温めるひとに出会うだろう
すきなひとたちを
しっかりと抱きしめるため
手放そう
ゆるそう