わからない

わからない
あのこの不機嫌のわけ

わからない
あのこの苛立ちと焦り

わかるわけない
ただ風のなか

トラウマを免罪符にする
人々の澱んだまなざしに
今さら揺らすこころなどなく

木々をそよがせる風と
ともに在る今がすきなだけ

だからわからない
あのひとの刃のねっこ

わからない
あのひとの欲しがるもの

わからない
切り落とされたきもちが
復讐を企んだって
さみしくなるだけなのに

わからなくていい
正答だけが整然と並んだ箱ではなく
色彩のとっ散らかった空の下でこそ
物語が生まれるってことは
わかるひとだけわかればいい

明るすぎる空間に
居場所がないせいで
たくさんまちがえてきたことを
自分自身に誇るために
これからも思うぞんぶん
まちがえたらいい

あれもこれも
わかるわけがないんだ
だからこそこころは踊り
また新しい風が生まれる