毒りんごのゆくえ

耐えて

耐えて耐えて耐えて

耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて

ぷつん と

ちぎれた糸は用無しになって

ごみ箱に押し込められるけど

今のはあたしの神経ですから

編み直すので返してください

(思い出は美化し放題!

二時間2,980円でいかが?)

なにをしても自由なので

なにを傷つけてもいいと

透明な刃を渡されたけど

結局自分の手首に使って

赤はきれいと思い知った

赤はきれいと思い知った

めでたし、めでたし

さて問題はその後だ

小人どもに撲殺された

魔女の遺した毒りんごが

行方不明になりました

どこへ流通したのか

(誰も知らない)

生まれ変わってこちら、魔都渋谷のスクランブル交差点から、もうすぐ起こる予定の事件を生中継します。

お天気にも恵まれて、台風すら他人事で、本当に、本当に、良かったですねぇ。秋風が心地よくって……

あ、ほら、始まりました!

「やばくね?」

耐えて

耐えて耐えて

耐えて耐えて耐えて、?、耐えて

絶えた 今

鳴り止まないスマホのシャッター

天使たちのランデブーを

手中に収めんとパシャーカシャー

残念ながら苦しみすぎだ

過ぎたるはってやつだよ

なんにもないじゃないか

生まれてきた記念として

勧誘でもしてみるかい?

生きるってのは

素晴らしいって

赤はきれいだって(思い知った)

ところでその指に絡みついている

いくつかはあたしの神経ですから

もう少し丁寧に扱ってくださいね

小夜風に頬を預けて

やっとわかりました

居場所なら売ったし

涙も質に入れました

あたしにとどめを刺したのは

何番目の小人だったのかなら

カメラにしっかり映っている

でもね、復讐だなんて

今どき流行らないから

腥風が訪れるのをただ

にこにこと待っている

あたしただの木偶です

「あ、事件発生です! たった今、予定通り事件が起きました! 犯人は美しくよられた糸の束を無差別に通行人に——」

だからそれあたしの神経だってば