短歌 (非)日常

1 幼な子の見上げる空を飛ぶ蝿の祝福の辞など誰も知らない 2 瞳から落つる涙を受け止めるためだけに傘を持ってきました 3 生きている間限定の感覚に溺れぬわけが見つからないわ 4 左手の薬指には約束が血管を殺し巻きついてい…

短歌 萌芽

1 ともし火の揺れるほうへと進んだらあなたが飾ってある植物園 2 たどり着く場所に双葉が生えていて間違いないと確信をする 3 手のひらの上で踊った枯葉ならつい先だって地球になった 4 あなたたちいつか地獄へ堕ちるわよ ス…

boo!

1 似たような顔をしているあなたがた 個性という字を書いてみなさい 2 笑うより笑われるほうがよほどいいことに気づけぬ愚かなbabe 3 ヴォージョレの解禁を待つ者たちがすでに倉庫にしまったハロウィン 4 ジャケットに黒…

短歌 肌

1 柔らかい熱持つ肌に触れるのが罪になること伝えておくね 2 好きな色の花を探しているけれど手に入ったらば枯らしてしまう 3 憂鬱はお湯をかけると白くなる 冬の吐息がそうあるように 4 身勝手をちゃんと叱ってほしいのに微…

短歌 寒い日

1 雨降りを知らぬあなたのあどけなさ 守り抜けると信じた過日 2 心ない言葉には耳を貸さないでどうぞ私の歌に浸って 3 街路樹が見届ける秋 美しさは寒さのことと知っていたのか 4 青になり誰も渡らぬ交差点 もう歩けない …

晩秋の傘

1 のど飴の優しさを知る晩秋にほんのりと死に近づいてみる 2 思い出よ 積もれ積もれよ落ち葉より軽いからなお悲しさも増す 3 嘘つきも人が恋しくなるらしくぬくもりのためまた嘘をつく 4 雨やどりしていいですか今日きっとあ…

短歌 秋の残滓

かけっこは今も苦手だ欲しいものに手が届きそうで届かないから 友達と一緒にされて立つ腹も恋の一部とわきまえなさい 夢なんてもう見れないと泣く君の手を温めることを夢見る アイルビーバックと残して去る人にアイドンウェイトの走り…

短歌 ゆるす

1 簡単に愚か者は牙を剥くけど君は微笑み全てを許す 2 この先は静かにしてて二番線で特急列車が泣いているから 3 赦しとは傷を手放しあやすこと 痛覚さえも我が物にして 4 結ばれる糸の色がなんで血と同じなのか考えてみよ …

短歌 未来

1 さかさまの夕焼けを見た帰り道 たぶん僕らは無敵だったね 2 小さな手 握り返したぬくもりを忘れてしまう仕組みが憎い 3 手放した記憶たちがまた居座って青春のやり直しをさせる 4 退屈な質問をしてすみません 私のどこが…

短歌 ホットココア

1 繰り返しお伝えします この僕は君の前では嘘がつけない 2 寂しいと呟くことが寂しいとホットココアに溶けてく言葉 3 ため息も白くなってく霜月のドアの向こうに君が待ってる 4 いつのまに育った気持ちだったのかわからない…