間奏 LOVE SONG
ここ最近では珍しく快晴という言葉がピッタリな日、高橋美和は日勤のために6時に起床し、出勤の準備をした。朝食はいつも適当に済ませている。夕飯の残りをつまんだり、出勤がてらコンビニに寄ったり。今日は時間があるので、冷蔵庫を覗…
ここ最近では珍しく快晴という言葉がピッタリな日、高橋美和は日勤のために6時に起床し、出勤の準備をした。朝食はいつも適当に済ませている。夕飯の残りをつまんだり、出勤がてらコンビニに寄ったり。今日は時間があるので、冷蔵庫を覗…
「僕、このでっかい栗が食べたい!」 「こら、まだ手を洗ってないでしょう。これからの季節はちゃんと、手洗いとうがいをしないとダメよ」 「ぐちゅぐちゅ、ぱー。おしまい」 「ふざけないの。お兄ちゃんはもうやったのよ?」 「ふー…
俊一は征二にすがりつくユイに憐れみの視線を送ると、ため息をついて携帯電話の電源を切った。ユイは征二の手を握った。すると、弱々しくではあるが握り返す反応があった。ユイはハッとしたが、それは反射神経に過ぎなかった。しばらく時…
別れてくれ。その言葉がユイの頭の中で何度もリフレインした。なんで私、すぐに「嫌です」って言えないんだろう。 今日の朝からあった出来事が走馬燈のように駆けめぐり、ユイは混乱した。 「今まで随分と迷惑をかけたことだろう。すま…
ナイフを、持っていた? 「まさか」 征二の兄、俊一は直感した。 「あれ、よく見るとお兄ちゃんじゃないね。でも、そっくり」 夏江は俊一に歩み寄ると、 「ねぇ、お兄ちゃんのお友達?」 「夏江、失礼でしょ、いきなり……すみませ…
数百年前の予言者の偉大なる予言があっさり外れて、世界に「新世紀」が訪れてから数年。だが、時代錯誤な妄想は日常に潜んでいた。 真っ赤な眼をした天使達が街に降りてくる。羽根をばたつかせながら、笑い声をあげながらやってくる。昆…
ユイは警察官二人に抱きかかえられるようにして、病院に現れた。『工藤征二 殿』と書かれた札の部屋の前で、立ち止まった。廊下に、見覚えのない人影がまばらにある。その中の一つがこちらに近づいてきて言った。 「佐々木さん、ですね…
ユイはいてもたってもいられなくなり、傘を2本持って外へ出た。征二を迎えに行こう。どこに行ったかはわからない。が、じっとしていると先ほどの恐怖――そう、恐怖だ。恋人に植え付けられた恐怖心が暴れ出して、征二への気持ちにヒビが…
雨が降り出した。空はどんよりと、朝だというのに薄暗い。ユイは地面に散らばったビーズをかき集め、エプロンのポケットにつめた。カンカン、と無機質な音を立てて階段を登って部屋に入ると、アパートの狭いリビングに座った。コーヒーは…
ユイは力を振り絞って征二の腕から逃れようとした。しかし、もがけばもがくほど、征二のユイを抱きしめる力が強くなる。 「苦しいよ、征二、離して」 「ユイ、聞いてくれ、俺は――」 「離して!」 ユイは自分の肩に絡められた征二の…