PHRASE 6 December 2006
数百年前の予言者の偉大なる予言があっさり外れて、世界に「新世紀」が訪れてから数年。だが、時代錯誤な妄想は日常に潜んでいた。 真っ赤な眼をした天使達が街に降りてくる。羽根をばたつかせながら、笑い声をあげながらやってくる。昆…
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数百年前の予言者の偉大なる予言があっさり外れて、世界に「新世紀」が訪れてから数年。だが、時代錯誤な妄想は日常に潜んでいた。 真っ赤な眼をした天使達が街に降りてくる。羽根をばたつかせながら、笑い声をあげながらやってくる。昆…
雨が降り出した。空はどんよりと、朝だというのに薄暗い。ユイは地面に散らばったビーズをかき集め、エプロンのポケットにつめた。カンカン、と無機質な音を立てて階段を登って部屋に入ると、アパートの狭いリビングに座った。コーヒーは…
ナイフを、持っていた? 「まさか」 征二の兄、俊一は直感した。 「あれ、よく見るとお兄ちゃんじゃないね。でも、そっくり」 夏江は俊一に歩み寄ると、 「ねぇ、お兄ちゃんのお友達?」 「夏江、失礼でしょ、いきなり……すみませ…
ユイは力を振り絞って征二の腕から逃れようとした。しかし、もがけばもがくほど、征二のユイを抱きしめる力が強くなる。 「苦しいよ、征二、離して」 「ユイ、聞いてくれ、俺は――」 「離して!」 ユイは自分の肩に絡められた征二の…
「僕、このでっかい栗が食べたい!」 「こら、まだ手を洗ってないでしょう。これからの季節はちゃんと、手洗いとうがいをしないとダメよ」 「ぐちゅぐちゅ、ぱー。おしまい」 「ふざけないの。お兄ちゃんはもうやったのよ?」 「ふー…
母は寒さの抜けきらない部屋の中で、征二から届いた手紙を食い入るように読んでいた。俊一はそんな母の様子を見守っていた。手紙の内容なら、自分が先に確認している。おそらく母が取り乱すようなことはないとは思うのだが。 「……俊一…
ここにはもう二度と来てはいけない気がした。けれど、今日は、いや今日だからこそ、私はここへ来なければいけないのだ。私は誰からも祝福されてはならない。私は罪人だ。しかし罪を償う術を私は知らない。もしかしてこうしてもがくことが…
ユイは警察官二人に抱きかかえられるようにして、病院に現れた。『工藤征二 殿』と書かれた札の部屋の前で、立ち止まった。廊下に、見覚えのない人影がまばらにある。その中の一つがこちらに近づいてきて言った。 「佐々木さん、ですね…
朝、目がさめるとリビングのほうから物音がしたので、美奈子は眠気をこらえてそちらに向かった。リビングでは買ったばかりの小さなテレビがついていて、それを食い入るように裕明が観ているのだった。 おはよう、と声をかけるより前に美…
木内が「白い部屋」の中央で腕組みして、「むーん」と何度もうなっている。岸井はそんな木内を「そんなに難しいことじゃないでしょ」と促すのだが、やはり木内は「むーん」と首を左右に傾げている。 「ピカチュウとピチューの違いがいま…