今日の短歌 それでもふたり
1 唯一になれなくたってそばにいるゆく夏の背に影を穿って 2 上を向くだけが生き様ではないと晩夏の向日葵たちの遺言 3 マグカップ覗きこむきみ覗きこむ私を覗きこむぬいぐるみ 4 影送りきみがみていた幻は他者が狂気と呼びた…
1 唯一になれなくたってそばにいるゆく夏の背に影を穿って 2 上を向くだけが生き様ではないと晩夏の向日葵たちの遺言 3 マグカップ覗きこむきみ覗きこむ私を覗きこむぬいぐるみ 4 影送りきみがみていた幻は他者が狂気と呼びた…
1 甘噛みのあとで目が合うカーテンを揺らす涼風だけが知ってる 2 火の揺れるのを見つめてる予感とはたぶんあなたのまばたきのこと 3 ろうそくの火を吹き消してさよならは夏に対してだけ告げたはず 4 水槽を覗くふたりは寂しさ…
1 カーディガン濡らす秋雨改札で二本の傘と待っていたきみ 2 水たまり輪っか浮かんで消えていくのを眺めてるきみを眺める 3 雨のこと悪天候というけれどそれならぼくは悪になりたい 4 ぼくはね、と言いかけたまま沈黙にふたり…
1 寂しさに果てる夜もあるいちかけるいちが2になれないせいだろう 2 深爪は自傷行為かサイレンが近くで鳴る夜は迎えに来てよ 3 虫の音と奏でるきみのひとりごとうわごとねごと心臓のおと 4 ただ空が美しかっただけなのにきみ…
1 背中から抱きしめてやるもう秋が去ってしまうと泣いているのか 2 青色のクリームソーダあなたとはわかりあえないぶんだけ甘い 3 昼下がり梨を剥きつつ眺めてる遠い世界の謝罪会見 4 何度でも壊れるきみを何度でも抱きしめて…
1 おかえりを言うためだけに起きているもうすぐ私ロボットになる 2 あんぱんの空虚地帯はカロリーを気にする者のああ免罪符 3 かわいいの最上級にきみの名を冠して辞書を編む秋の暮れ 4 カーディガン重ね着をして咳ひとつ心配…
1 容赦ない季節ときの巡りに黙りこむコンロの炎とつとつ揺れる 2 おくれ毛にからみつく指ほんのりとみかんのにおい(きみだけだから) 3 カーラジオから流行歌「知らないね」と笑いあう午後たしかにふたり 4 満月にアクセル深…
1 ラブアンドピースを祈る指先の尖ったネイル(もう戻れない) 2 林立のハザードランプふたりには居場所のなさが心地よいこと 3 環七を滑り降りてくライトたち目を細めると笑ったみたい 4 助けてと言える強さを持つ人よ桜は寒…
1 おそろいのタオルはためく昼下がりナイフ片手に影も揺れてる 2 枯れていく花束見つめ幸せを過去形にするきみの黯い目 3 優しさの意味を辞書引くことはない花のあふれる街に暮らして 4 叫べたら壊れることもなかったと軋む吊…
1 初雪を待つ窓辺にて会いたさをミルクココアにぐるぐる溶かす 2 加湿器の勤勉なこと灰色の街に暮らして十一年目 3 吐く息の白さを比べあって今日特に用事がなくて嬉しい 4 新しい財布をセールで買ったら入れるお金が減ってし…