Case4.予言
はるかを元気づけようと香織が提案したのは、ショッピングだった。女子二人ではしゃぐのも悪くないが、より買い物をエンジョイするため、との名目で葉山も同行してもらうことになった。 つまり、下手に隠れられるより目の前にいてもらっ…
はるかを元気づけようと香織が提案したのは、ショッピングだった。女子二人ではしゃぐのも悪くないが、より買い物をエンジョイするため、との名目で葉山も同行してもらうことになった。 つまり、下手に隠れられるより目の前にいてもらっ…
るいの病室を出たはるかに声をかけてきたのは、娘を連れた隆史だった。 「はるかちゃん」 「西条さん。どうしてここに」 「お見舞い」 そう言って、テラエシエルと同じアーケードに入っているケーキ屋の箱を見せた。 「シュークリー…
逡巡する葉山の目の前に、かちゃんと音を立ててコーヒーカップが置かれる。葉山がハッと息をつくと、目の前でコーヒーが湯気を立てていた。 ホスピタリティのかけらもないな、と葉山は内心でつぶやいた。 コーヒーを一口すする。味は悪…
古城姉妹は早くに両親を亡くしており、9つ年上の姉るいが会社員として妹のはるかの夢を応援していた。はるかはどちらかというと引っ込み思案で、何をするにもるいの後ろについて歩くような性格だ。 そんなはるかの夢は、パティシエにな…
「志望動機は?」 同期の竹中佳樹がタバコ片手にだるそうに聞いてくる。山積みになった捜査資料にゲンナリしていた僕はため息をついた。 「就活生かよ」 「社会の平和を守るため、は嘘だろ」 「なんでだよ」 「志望動機は?」 竹中…
朽ちた枝のように見えるこれは、実は魔法の杖なのだ。そのことを知っているのは、私と黒猫のルルルだけ。 一週間前、私は公園でその杖を見つけた。ベンチの隅に無防備に置かれていたのだ。大発見だった。だから嬉しくて、私はルルルと駆…
朝、目がさめるとリビングのほうから物音がしたので、美奈子は眠気をこらえてそちらに向かった。リビングでは買ったばかりの小さなテレビがついていて、それを食い入るように裕明が観ているのだった。 おはよう、と声をかけるより前に美…
木内が「白い部屋」の中央で腕組みして、「むーん」と何度もうなっている。岸井はそんな木内を「そんなに難しいことじゃないでしょ」と促すのだが、やはり木内は「むーん」と首を左右に傾げている。 「ピカチュウとピチューの違いがいま…
太陽が傾いてきたころになって、美奈子はようやく意識を取り戻した。 「気分はどうだい」 清潔な布で美奈子のひたいに浮かんだ汗をぬぐいながら、木内は問いかけた。 「……はい、大丈夫です」 小さく、しかしはっきりとした口調で美…
美奈子は異変に気付くと、すぐにベッドから身を起こした。身の危険を察知すると、「誰っ!」と声をあげたのだが、すぐに美奈子は絶句した。 美奈子にとって見たことのない男が、フォークを片手にこちらを凝視しているのだ。 「馬鹿にし…