第十八話 フラッシュ
すべてを聞いた私は、涙を流しながら、彼の手を握りしめていた。 「何も……何も知らなくて……私。ごめんね」 「どうして智恵美が謝るの」 「だって私、完全に勘違いしてて……夏菜子のことも、全然わかってなかった。そんなことがあ…
すべてを聞いた私は、涙を流しながら、彼の手を握りしめていた。 「何も……何も知らなくて……私。ごめんね」 「どうして智恵美が謝るの」 「だって私、完全に勘違いしてて……夏菜子のことも、全然わかってなかった。そんなことがあ…
入学してすぐに夏菜子が声をかけてきたという。積極的な性格だった彼女は、新歓コンパで同じグループだった桐崎くんに一目惚れしたらしい。 告白こそしなかったものの、すぐに連絡先を交換し、LINEなどで会話をしていたという。 桐…
嫌だ。こんなお別れなんて、絶対に嫌だ。 私は必死で彼のシャツの腕の部分をつかんだ。 「べ、別にいいの」 声が震える。 「殺人鬼なんかじゃなくていい。むしろ、そんなんじゃないほうがいい。お願い、ごめん、謝るから、『さよなら…
「確かに、大橋夏菜子を埋めたのは僕だよ」 そう、でしょう? 「でも、彼女を殺しただなんて、僕は一言も言ってない」 !? 「大きな間違いがあるみたいだから、ちゃんと伝えるよ。地中にははるか太古からの記憶が眠っている。それを…
私たちは黙ったまま、スタバの一角に座っていた。ソイラテを一口飲み、ちらりと彼の顔を見る。想像してはいたが、やはり、いつも通りだ。それが、却って怖かった。 「あの、さ」 私はおずおずと言葉を発した。 「聞いた? ニュース」…
藤城先輩の『自殺』の悲しみもまた、あっけなく忘れ去られた。美恵といえばあれから少しナーバスになっていて、大学も休みがちになっている。 私は美恵を心配はしたが、しかし、そんな資格は自分にはない気もしていた。 夏休みが終わっ…
「いい夜だね」 藤城先輩がひたひたと近づいてくる。私は後ずさった。 「星がこんなに綺麗なんだ。そんな恐い顔しないでよ」 ナイフを手元で弄びながら、ニコッと笑う。 「俺の顔に見事に泥を塗ってくれたね」 「何のことですか」 …
あれから、何事もなかったかのように、ペンションでの時間は流れた。 肝試しから帰ってきた一同は、好き勝手に部屋でどんちゃん騒ぎをし、その輪の中に美恵もいた。若干、自棄になっているようにも見えたが、そっとしておくことにした。…
「美恵、どういうこと?」 「嫌だ、嫌だよこんなの! 智恵美、助けて!」 「落ち着いて。何があったの。話せたらでいいから教えて」 美恵は首を横にブンブンと振る。 目が血走っている、その尋常ではない様子に、私は何とか彼女をな…
河口湖畔での合宿の夜といえば、お約束なのが肝試しだ。ペンションから歩いて少し行った湖の畔に、乙女の石像があるという。 食事を済ませた一同は、すっかり肝試しに行く気満々だ。 「その乙女の像の頭を撫でると、恋愛成就するんだっ…