ピカピカ
ユニコーンを父に、ペガサスを母に持つアレクは、しかし角も翼も授からなかった。兄弟たちはアレクを憐れみ、また疎んじた。しかし、父と母だけはアレクに惜しみない愛情を注いだ。そのおかげで、アレクはのびのびと育つことができた。 …
ユニコーンを父に、ペガサスを母に持つアレクは、しかし角も翼も授からなかった。兄弟たちはアレクを憐れみ、また疎んじた。しかし、父と母だけはアレクに惜しみない愛情を注いだ。そのおかげで、アレクはのびのびと育つことができた。 …
1 風呂上がり米を研ぎつつ聴くラジオいつもの声に励まされてる 2 叫ぶよりもう倒れたい夜だけど深夜ラジオが笑かしてくる 3 通勤のお供はラジオ満員の京王線で笑みかみ殺す 4 三叉路を過ぎればきみがいる/いない/別の誰かと…
各駅停車新宿行きが 善悪を轢いてくれたなら—— 蝶よ、蛹のまま溶け出でよ 艶めかしく地球へと 四肢を投げ出した女の あるいは黒猫の 若しかして寂しかったのか 特急新宿行きは 善悪正邪を無視して進む—— 雪よ、薄汚れて水に…
彼の唯一の関心は素数である。 る、る、る、と私が歌ったところで全く意味はない(それでも絞りだした悲鳴が歌なのだけれど) 私はあの日あの日あの日幕張付近で京成線の踏切を渋滞する車の後部座席から眺めており――遮断機がひどく疎…
挨拶のない夜明けに 一途な愛の現在位置を確認した 己の愚かさがよく溶けた アイスソイラテが美味しい午後 しあわせ、と口にすれば ひたいの玉の汗が笑いだす 暑いですねぇ ひところはコートも着ていたのに まだ憂鬱は膝を抱えて…
加速度を上げたレッテルが 水槽の中ではち切れるとき 金魚どもの骨々は報われる 空——まだ数えるには足りない幻滅と 明滅するスマートフォンの広告たちが ゆらゆら行く手を阻むためだけに在り 私の残滓の根本になってしまうとして…
私はあなたに もう正論しかぶつけられないのだ 二度と過あやまつことさえもできないと 歌を歌っても 愛してるよりさよならの数の方が 多いことに気づいてはならなかった (後悔するために ……継続される呼吸) 正論としておめか…
1 予報にはなかった雨に濡れそぼり帰る家にはきみという謎 2 今どきはわかりやすさがウケるけどきみという謎だけは解けない 3 正答のないなぞなぞを解いている気がするきみのとなりにいると 4 カーディガン脱ぐとききみが目を…
1 十年があっという間に過ぎてって十一回目の秋桜を待つ 2 不器用はもはや伝統芸能かいっそ人間国宝になれ 3 一人称複数形ではや十年なんだかんだで今日も笑顔で 4 積読があふれる部屋の隅っこで文字に溺れるきみを見つけた …
1 「うん、いいよ」そこで途切れたやりとりのとなりで揺れる曼珠沙華たち 2 若かったそれよりずっと馬鹿だった落暉を何度見逃したろう 3 沈黙は愛のかたちと気がついて微笑み交わす秋の訪れ 4 「スプーンじゃないほう取って」…