1 きみはまた私がすきだなどという そんなことより月がきれいだ 2 ピアノよりきれいな声で泣けるなら今すぐここで泣かせてあげる 3 春を待つきみのとなりで雪を知る たぶん私の早とちりかな 4 整った食…

味蕾

どんなに大切に与えられた名前も 言葉ひとつで饐えてしまうから 私たちはとても絶望しやすく バランスを取ることを請求されて 結局あっけなく崩れていくのを 誤魔化すのがとても上手な生き物だ 指先が酸っぱく…

ひみつ

1 君の横空いているなら1名で今すぐ予約させてください 2 言い訳を探してるうち春が来て夏去り秋に枯れ果てるひと 3 折る指も足りなくなって心臓を差し出しました きみに逢いたい 4 髪の毛も爪も裸もき…

願いごと

1 首を吊るための道具と知っていてあなたに贈る手編みのマフラー 2 飴玉を転がす舌先を眺める 赤色3号はたぶん私 3 手を繋ぎおんなじ月を見上げても一つになれない 寒さのせいだ 4 道端に落ち葉に隠れ…

pinta(糸電話のひみつ)

せっかく神様と糸電話してあなたの秘密を聞き出そうと思ったのに、耳に入ってくるのは痙攣しながら諧謔を弄する言葉ばかり。  たかが孤独です、糸電話で繋がったところで埋められるものではないし、そも…

クリスマス

ろうそくを吹き消してまだ残る影 児の期待踏みしめておけサンタさん クリスマス百点満点として笑む ハズレなし優しい夜を引き当てた 雪を待つ人に届いてほしい歌 鈴の音が幻でもなお嬉しくて 微笑みもオーナメ…

虫ピン

ぽつぽつと雨の降る朝 折れかけた魔法の杖と 鈴なりになった眼球と 三匹の蛇の頭を携えて あなたはお仕事へゆく ささやくように悲鳴をあげる 日記をすべて燃やしています もし無事に私が私を殺せたら どうか…

スーパースター

私がいなくなっても 大丈夫だってことを 海馬の奥にまで思い 知らせてくれたのは 間違いなくスーパースター 誰よりも夢の味を知ってて 量産方法をばらまいてから 私にとどめを刺してくれた 何も変わっていな…

反転

反転した! 何もかもが 私に断りもなく反転した! 敵だと思っていたミーコちゃんは猫だった 好きだと疑わなかったコーラは無害だった ヒットチャートが上から紹介されていき 無関心こそが愛であったと息を絶や…

二十二話 刹那の灯(一)血

その場に居合わせた女性看護師がすぐに美奈子に駆け寄り、三角巾として使っていたバンダナで美奈子の二の腕をきつく締めあげ、「大丈夫だよ」と声をかけた。それから先ず消毒しようと傷口から溢れる血を拭おうとする…