短歌 ミルクココア

1 初雪を待つ窓辺にて会いたさをミルクココアにぐるぐる溶かす 2 加湿器の勤勉なこと灰色の街に暮らして十一年目 3 吐く息の白さを比べあって今日特に用事がなくて嬉しい 4 新しい財布をセールで買ったら入れるお金が減ってし…

短歌 走る

1 ラブアンドピースを祈る指先の尖ったネイル(もう戻れない) 2 林立のハザードランプふたりには居場所のなさが心地よいこと 3 環七を滑り降りてくライトたち目を細めると笑ったみたい 4 助けてと言える強さを持つ人よ桜は寒…

短歌 年末

1 お便りは tasukete@god.ne.jp まで 待ってるよ 2 傷跡のない人生はつまらない下味のないチキンみたいに 3 一晩で片づけられたクリスマスツリー 私は笑ってました 4 靴下に穴が開いたら縫えばいい が…

冬の五句

セロリまで筋が朝向く食卓よ   染まりゆく名残りの空に手透かして   思い出を指で閉じ込め日記果つ   白鳥よ旅立つ朝の決意こそ   木枯らしが窓たたく夜のオラトリオ

メタセコイア

私にとってメタセコイアは どこまでも悪辣な他人事で あなたにとってその大樹は 呼吸そのものだったとして 結局微笑むことを選ぶでしょう 危機を報せるジングルベルが あなたには只管 おめでとう おめでとう と聞こえるのは 夜…

俺のギター道

都内私立大学1年生の篠井久志は、大学生になって初めてギターを持った。マイペースを地で行く彼について、いくつかのエピソードをお話ししよう。 彼は高校生までは生粋の茶道部で、和を尊ぶ少年だった。外見も、黒髪短髪の地味な少年だ…

オリオン座と嘘と

オリオン座を寒空に見つけた。僕の中で、果たされない約束が白く凝固していく。日々は容赦なく流れていくし、時の波に押し流されて、若さとやらも既に失われつつあるようだ。 「愛情とは自らを定位置に投影するための曖昧で不可解な感情…

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私の愚かさは例えるならば 血を吐く前夜の白羊 ミュートしたまま終わった 大演説のごとく虚しい 始まりのない終わりは何処 私に居座るよくない細胞 ついた嘘の数だけ分裂する 下がりきらない半音に ジムノペディを糾弾しても う…

今日の短歌 ビー玉

1 最低と口にするきみ凹むぼく天気の話とわかっていても 2 速報に耳を塞いで笑ってる愚鈍と安穏とは比例する 3 ビー玉を夕陽に透かす憂鬱な表情をして土鳩が過ぎる 4 ビー玉を夕陽に透かす憂鬱もかけがえのないあなたの一部 …

飛べばいいんだ

飛べばいいんだ 苦しいのならば ここ以外の空へ 飛べばいいんだ あなたは懲りもせず 素数を数え続けては 時折偶数に瞠目して 修正ペンを探し出す 飛べばいいんだ 可笑しいのなら ここ以外の地へ 飛べばいいんだ あなたは相変…