短歌 伝言
1 エラ呼吸できないぼくら輝きは確かにあの日失くしたうろこ 2 うろこ雲見上げて歩く帰り道 神さまがまた居留守を使う 3 そばにいてなんて言えない留守電に悲鳴を入れたなんて言えない 4 言の葉が紅葉したら逢いにゆくひとと…
1 エラ呼吸できないぼくら輝きは確かにあの日失くしたうろこ 2 うろこ雲見上げて歩く帰り道 神さまがまた居留守を使う 3 そばにいてなんて言えない留守電に悲鳴を入れたなんて言えない 4 言の葉が紅葉したら逢いにゆくひとと…
1 ふっくらと焼き上がったね僕のためだけに死んでくれた秋刀魚ラブ 2 それぞれの自宅に小さな火葬場がグリルという名で存在をする 3 おいアヒルお前の兄は目の前の丸焼きとして立派であるぞ 4 カブトムシ素手でさわれるみたい…
1 苦しくて金木犀を手折るきみ逃れられずにそこかしこ秋 2 冷凍庫の奥に隠した金魚たち人を恨むか夏を騙るか 3 満月は欠けてゆくのみ きみはまだ白紙の手紙燃やせずにいる 4 二つめの月は青色回転灯まちの上気を牽制している…
星月夜平和こそ世の宝物 映えるほど虚しくもある毒きのこ 深呼吸明日は明日流れ星 夜学するひとのため息風となれ 朝露と輝く悔し涙こそ
1 すっぴんで葬った過去 果てしない季節の巡りに逆毛を立てる 2 ラジオからやっぱりきみのSOS 聞こえないふりして眠りたい 3 ワイシャツのボタンを掛け違えている 気づいたけれど教えてあげない 4 この街がパズルだった…
1 見つかった小指がとても嬉しくて落ち葉を好きなだけ蹴り上げる 2 深爪が疼く 秋には許される予定で道を間違えてきた 3 カナリアをお道具箱に閉じ込めた秘密わけあう少年ふたり 4 沈黙を分けあえるからきみとなら馬鹿のまま…
テーブルの上にレモンがひとつ。壁に掛けられた時計は、正午を少し過ぎたあたりを指していた。 大事な話がある、と言われたのはいいが、もう何分も沈黙がこの部屋の支配をしている。 ふと、白い鉢が目についた。 「なんていうの」 私…
1 「天国をまだ知らないの」「そら、ええな」天使にも見るダイバーシティ 2 待合のアクアリウムをじっと見る きっと今ならショパンが弾ける 3 ポタージュが恋しくなれば記念日を忘れることも愛しさのうち 4 ルービックキュー…
枯れてまで寄り添うすすき風に揺れ 名を呼んでなお一人きり秋の朝 秋澄んで大丈夫だと膝こぞう 秋色のシャドウ明日は旅立ちよ なり代わり泣いてくれるか秋の蝉
1 私です、ブルーベリーをジャムにするつもりもないのに潰したのは 2 手紙には書けないけれどやりました 柘榴朽ちれば赤いじゅうたん 3 できるだけ早く助けてくださいね ジャムにするには甘すぎるから 4 甘栗の一番大きいの…