短歌 ねこ

1 フライパンのうえで色づく目玉焼きはいつも私をじっと見ている 2 合い挽きを合成獣と認識しハンバーガーを口にする夜 3 問)黒い帯が目元に描かれた履歴書を受け取る人の気持ちは? 4 渦巻きを眺めていると右側に首が傾いて…

春202102

春浅い川のみなもの煌めきよ 薄氷にピリオドを打つスキップよ 五線譜よ春告げ鳥を導くか 春風に心弾ませ旅の手記 ひとりごと零してもまだ朧月

短歌 ゆれる

1 ゆれるゆれるゆれるゆれるゆれる(存在をさせていただいております) 2 おくすりをもらいにゆく日許可されてもう一ヶ月生き延びてみる 3 八月は今も苦手だ終わるとき左手首が疼いてしまう 4 あなたこそ雨 と走り書きされた…

春変

寝ぼけた顔して 幼い唇でぽろぽろと 退廃的なことを言うの 春だというのに 心臓くり抜くような 我儘ばかり振り撒くの きみは冬に眠っていたかったんだろうね 魚のような目をして 灰色の空を見ている 饐えた風の手土産を 嬉しそ…

短歌 「は」

1 白シャツでカレーうどんを食べるひとだから私は惹かれたのです 2 真夜中にきみの寝言で目覚めても首を絞めたりはしないからね 3 おやすみは優しい響き また明日目を覚ましてもいいなと思う 4 あなたにはわかるはずない痛み…

短歌 癖

1 風を呼ぶさかさまつげにマスカラを塗ったとたんにほころんだ春 2 苦しいと瞬きをする癖があり診断したがる人種がいる 3 大丈夫大丈夫って口癖は大丈夫じゃないときに出てくる 4 雨上がり間違いなんてなかったとスタッカート…

1 ト音記号へし折ってから五線譜に愛を書き足したの誰ですか 2 ドップラー効果でしょうかついさっききみの口からしねときこえた 3 大嫌い 言った直後に口の中がひどく酸っぱくなるほど大好き 4 後遺症←自己責任原則転嫁〈義…

容疑者3名の円卓

論客R氏が腕試しに 青い瓶の中身を知りたがり 詩人D氏が立腹して それは野暮だと吐き捨てる 主宰W氏は円卓にて ほくそ笑みながら足を組む R氏が求めるのは日常からの脱出方法 D氏が詠うのは牛肉へ捧ぐ鎮魂歌 W氏はぺろりと…

キャラメル売り

シナプスの存在しない場所に 私はいる 私がいる あられもない姿で (キャラメルを舐めながら) 横たわっている 銀紙をくしゃくしゃに 気の済むまで丸め終わった残骸が 私の心臓だったとして キャラメルを舐め終えた 甘ったるい…

1 大切なことは二度言う隠したいことは何度も言って誤魔化す 2 に、ん、げ、ん、は悲しい響き我慢して逃げないって言ってるみたい 3 獣から人に戻るときにまとうその切れ端でいいからなりたい 4 食べ物と暮らしています ぴー…